ブログBlog

Blog

075-285-1017

営業時間

午前 09:30~12:00
午後 14:00~20:00

定休日

日・祝
※土曜日 9:30~12:30,14:00〜18:00にご希望の場合は、
  電話でご確認下さい。

Home > ブログ > 鍼灸治療で過敏性腸症候群の改善が期待できます。エビデンスとメカニズムを紹介

ブログ

鍼灸治療で過敏性腸症候群の改善が期待できます。エビデンスとメカニズムを紹介

鍼灸治療は、筋肉の緊張(こり)や痛みをやわらげるだけでなく、自律神経に作用し血管を拡げて血流をよくしたり、内臓の機能を整える効果があります。また、脳などの中枢神経系に作用して精神を安定(リラクゼーション)にしたり、ホルモン・免疫機能を高めるなど全身のさまざまな効果が期待できます。

過敏性腸症候群は、腹痛や便秘・下痢などの消化器症状の他に、頭痛、頭重感、肩こり、冷え症、疲労・倦怠感などの自律神経失調症状、抑うつ感、不安感、不眠、イライラ、意欲低下などの神経症状をともなうことがあります。

鍼灸治療は、腸の蠕動運動を整えるだけでなく、同時にさまざまな自律神経症状の緩和も期待できることから、過敏性腸症候群の諸症状の改善が期待出来ます。

これまでに過敏性腸症候群に対する鍼灸治療の臨床試験が世界中の国々で行われ、その効果が報告されています。

ここでは過敏性腸症候群に対する鍼灸治療の効果とメカニズムについてエビデンスを紹介します。

 

くわしくはこちらもご覧下さい。「過敏性腸症候群と鍼灸治療」

目次

鍼灸治療で過敏性腸症候群のさまざまな症状が改善。臨床試験のエビデンス

多くの過敏性腸症候群(IBS)に対する鍼灸治療の臨床試験が世界中で行われ、その成果が論文として報告されています。その一部を紹介します。

下痢タイプのIBS患者さん62人に、天枢(お腹のツボ)・上巨虚(下腿のツボ)に温灸を6回/週で4週間(計24回)行いました。その結果、IBSの主症状である腹痛や排便切迫感、腹部膨満感、排便回数、便の性状の改善がみられました。また、不安感、抑うつ感などの神経症状の改善もみられました。さらにこの研究では、IBSの原因とされる結腸におけるセロトニンの分泌亢進が、温灸により減少したことを検証しました(Comparison of electroacupuncture and moxibustion on brain-gut function in patients with diarrhea-predominant irritable bowel syndrome: A randomized controlled trial.)。

便秘タイプのIBS患者さん63人に、天枢(お腹のツボ)・上巨虚(下腿のツボ)に電気鍼(30分間)を6回/週で4週間(計24回)行いました。その結果、IBSの主症状である腹痛や排便困難感、腹部膨満感、便の性状の改善がみられました。また、不安感、抑うつ感などの神経症状の改善もみられました。さらにこの研究では、IBSの主要な病態である腸の知覚過敏が鍼治療で改善したと報告しています(Comparison of Electroacupuncture and Mild-Warm Moxibustion on Brain-Gut Function in Patients with Constipation-Predominant Irritable Bowel Syndrome: A Randomized Controlled Trial.)。

下痢タイプのIBS患者さん448人に、曲池(肘のツボ)・上巨虚(下腿のツボ)・天枢(お腹のツボ)・大腸兪(腰のツボ)に電気鍼(30分間)を4週間で計16回行いました。鍼治療と薬物治療の効果を比べた結果、鍼治療は薬物治療と同等の効果(排便回数の減少、便性状の改善、普通便の増加)がみられました(Electroacupuncture for patients with diarrhea-predominant irritable bowel syndrome or functional diarrhea: A randomized controlled trial.)。

このように鍼灸治療は、効果に個人差はありますが、IBSの腹痛や腹部膨満感,排便切迫感、便秘、下痢、排便回数、腸の知覚過敏、神経症状などを改善し、QOL(生活の質)の向上が期待できると考えられます。

なぜ過敏性腸症候群に鍼灸治療が効果があるの?そのメカニズム

過敏性腸症候群に対する鍼灸治療の効果を検証するために、実験動物を対象とした基礎研究が行われ、その成果が論文として報告されています。その主な内容の一部を紹介します。

鍼灸治療が腸の蠕動運動を整える

過敏性腸症候群の原因として慢性的なストレスや心理的な要因が関係していると言われています。
ラット(ねずみ)にストレスを負荷すると、腸の蠕動運動が亢進し、過敏性腸症候群のような状態になります。
しかし、ストレスを負荷する前からラットの後ろあし(後肢)に電気鍼をしておくと腸の蠕動運動の亢進が抑えられました。
つまり異常な腸の蠕動運動を鍼治療が正常化すると考えられます。

鍼灸治療は過敏性腸症候群の上腹部症状も改善

過敏性腸症候群では、心窩部痛(みぞおちの痛み)や吐き気、嘔吐、食欲不振、胸やけなどの上腹部症状(胃の症状)がみられる場合があります。つまり胃の機能が低下していることがあります。
ラットにストレスを負荷すると、胃の機能(排出力)が低下します。
しかし、ストレスを負荷する前からラットの後ろあし(後肢)に電気鍼をしておくと胃の胃の機能(排出力)の低下が抑えられました。

鍼灸治療が過敏性腸症候群を改善するメカニズム

慢性的なストレスにさらされると脳の視床下部からCRF(corticotropin releasing factor:副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が過剰に分泌されます。このCRFは様々なストレス反応を引き起こす副腎皮質刺激ホルモンを放出させます。また、腸からはセロトニンを過剰に分泌させます。この過剰に分泌されたセロトニンが腸の蠕動運動の異常や知覚過敏(腹痛や不快感)を引き起こします。
ラットの脳脊髄液中にCRFを投与すると腸の蠕動運動が亢進しますが、ラットの後ろあし(後肢)に電気鍼をしておくと腸の蠕動運動の亢進が抑えられました。
つまり鍼治療は、脳に作用して脳内のCRFの分泌を抑制した可能性が考えられます。この他にも鍼治療が過剰なセロトニンの分泌を抑えるという研究結果が多く報告されています。

まとめ

これまでの研究により鍼灸治療が、過敏性腸症候群の患者さんの腹痛や腹部膨満感,排便切迫感、便秘、下痢、排便回数、腸の知覚過敏、神経症状などを改善することが報告されています。
また、そのメカニズムとしては鍼灸治療の鍼や灸の刺激が脳に伝わり、自律神経の副交感神経を刺激して腸の蠕動運動を活発にしたり、過敏性腸症候群の原因となるCRFやセロトニンの過剰な分泌を抑えることが報告されています。

鍼灸治療は、自律神経系に作用し、胃や腸の調子を整えるだけでなく、リラクゼーション効果や全身の調子を整える効果が期待できます。
当院では詳細なカウンセリングによる改善点のアドバイス、腸を整える鍼灸施術、腸内環境を整えるプロバイオティクス、腸内環境を調べる腸内細菌検査などをご提案しています。
お腹の不調や過敏性腸症候群でお悩みの方は、お気軽にご相談下さい。

シェアするShare

ブログ一覧