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NEWS

お母さんの腸内環境が子供に影響 -肥満になりにくい体質-

妊娠中のお母さんが食事で食物繊維を摂取することで、胎児の代謝機能の発達が促されて、出生後に子供が肥満になりにくい体質になるという研究結果が報告されました。

母胎内の赤ちゃんは無菌状態で、出産時にお母さんの腸内細菌を受け継ぐとされていますが、母胎内ですでにお母さんの腸内細菌の影響を受けているということを示しています。

東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門の木村郁夫教授らと慶應義塾大学薬学部の長谷耕二教授らの研究グループが発表し、米国科学誌『Science』に掲載されました。

『妊娠中の食物繊維の摂取は、胎児の代謝機能の発達を促進し、肥満になりにくい体質をつくる』

Kimura I, Miyamoto J, Ohue-Kitano R et al: Maternal gut microbiota in pregnancy influences offspring metabolic phenotype in mice. Science. 2020 Feb 28;367(6481).

『マウスにおける妊娠中の母親の腸内細菌は、子孫の代謝表現型に影響する』

目次

妊娠中に食物繊維が豊富なエサを食べていた母親から生まれた子供マウスは肥満になりにくかった

【研究方法と結果】
妊娠した母親マウスを通常の状態で飼育したものと無菌の状態で飼育したものにわけました。
生まれた子供に離乳後に高脂肪食を食べさせたところ、無菌状態の母親から生まれた子供マウスは、通常状態の母親から生まれた子供マウスに比べて、体重、血糖値、中性脂肪が増加しました。
つまり高血糖、高脂肪、肥満のメタボリック状態になりました。
また、妊娠中に食物繊維を含まないエサを食べていた母親から生まれた子供マウスでも同じように肥満になりました。
ところが、食物繊維を豊富に含むエサを食べていた母親から生まれた子供マウスは、肥満になりにくいことがわかりました。

母親の腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が胎児に影響している

この実験から、“食物繊維”と“細菌”が肥満の予防に関係しているのではないかと考えられます。
腸内細菌は食物繊維を分解し、短鎖脂肪酸をつくることがわかっています。
短鎖脂肪酸は肥満を予防する働きがあります。
短鎖脂肪酸には酢酸や酪酸、プロピオン酸がありますが、無菌状態の母親マウスや食物繊維の少ないエサを与えた母親マウスにプロピオン酸を与えた結果、生まれてきた子供マウスが肥満になりにくかったそうです。
この研究で興味深いことは、母親の短鎖脂肪酸がお腹の中にいる胎児に影響を与えていることです。

短鎖脂肪酸の働き

短鎖脂肪酸は、腸内細菌が難消化性の食物繊維を発酵してつくられます。
ヒトの場合、酢酸、酪酸、プロピオン酸が代表的な短鎖脂肪酸です。
【短鎖脂肪酸の働き】
①大腸の保護作用
 酢酸が病原性大腸菌などの毒素を防ぎます。
②発がんの予防
 短鎖脂肪酸が腸内を弱酸性にし、有害物質である二次胆汁酸をできにくくします。
③肥満の予防
 脂肪細胞へのエネルギーの取り込みを抑え、脂肪細胞の肥大を防ぎます。
 交感神経系を介してエネルギー消費を促進します。
④食欲の抑制
 酪酸やプロピオン酸はGLP-1と呼ばれる腸管ホルモンを分泌します。
 GLP-1は脳に作用して食欲を抑える働きがあります。
⑤免疫機能の調節
 腸は全身の免疫細胞のおよそ70%が集中し、免疫機能に重要な役割を果たしています。

母親の腸内細菌がつくりだした短鎖脂肪酸が、胎児の短鎖脂肪酸受容体を刺激

さらに同研究チームは、胎児マウスの交感神経・腸管・膵臓に短鎖脂肪酸の受容体であるGPR41、GPR43が多く存在することをみつけました。
母体の腸内でつくられた短鎖脂肪酸が、血流で運ばれ、胎児の短鎖脂肪酸受容体を刺激し、代謝・内分泌に関わる神経系やGLP-1を分泌する細胞、膵臓のβ細胞の正常な発達を促すことで、肥満になりくい体質を作ることが明らかになりました。

まとめ

お腹のなかにいる赤ちゃんはまだ無菌状態で、生まれてくる時に初めてお母さんの菌や外界の菌と接触し、その後、徐々に腸内に細菌が定着するといわれています。
今回の研究報告で、お腹にいる時にすでに赤ちゃんは、お母さんの腸内細菌の影響を受けていることが示されました。
「デブ菌」や「ヤセ菌」と言われるように、肥満ややせに腸内細菌が関係していることはすでに報告されていますが、子供の肥満にお母さんの腸内細菌が関わっている可能性が示されました。
妊娠中に食物繊維の多い食事をとることなど腸内環境を整えることで、腸内細菌が活性化して、生まれてくる赤ちゃんにも良い影響があるということだと思います。

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