寒くなる冬はゴースト血管に注意 -お灸で血流をアップ-
先月の羽鳥慎一モーニングショーで、「ゴースト血管」についての特集がありました。解説されていたのは、血管研究の第一人者である大阪大学の高倉伸幸教授で、ゴースト血管を名付けられた方です。
全身に張り巡らされている毛細血管の血流が途絶えてしまった状態を「ゴーストタウン」になぞらえてゴースト血管と名付けられたそうです。
当院に来院される患者様で高齢の方や女性の方には、手足が冷たい方が結構おられます。毛細血管がゴースト化しているのかもしれません。
ゴースト血管の改善方法や血流をアップするツボを紹介します。
目次
- ○ ゴースト血管って?
- ・毛細血管のやくわり
- ・ゴースト血管とは
- ・ゴースト血管は様々な病気や症状に影響します
- ○ ゴースト血管の改善方法
- ・睡眠
- ・運動
- ・入浴
- ・毛細血管を増やす食材
- ○ 血流をアップするツボを紹介します
- ・足のツボ
- ・下腿のツボ
- ・お腹のツボ
- ・ツボ刺激による血流アップの効果
- ○ まとめ
ゴースト血管って?
毛細血管のやくわり
心臓に出入りする動脈・静脈の太い血管は体の末梢にいくにしたがい細くなり最先端部分では、直径1/100〜200mmにも細くなります。これが毛細血管です。
毛細血管は皮膚や筋肉、臓器など体中のあらゆる細胞に連絡しています。血管の99%は毛細血管で、毛細血管のすべての長さは約10万㎞と地球を2周半するほど長いそうです。
毛細血管の役割は、毛細血管の尖端部分から血液が漏れ出ることで、細胞に酸素や栄養をとどけ、二酸化炭素や老廃物を回収することです。
毛細血管が正常であれば、体の細胞に栄養が十分に届き、老廃物も蓄積しないため、体の組織が活性化し健康をたもつことが出来ます。
しかし、毛細血管がゴースト化してしまうと様々な弊害が起こります。
ゴースト血管とは
毛細血管は内皮細胞と内皮細胞の外側にある壁細胞とから出来ています。内皮細胞のすきまから血液がもれだし、酸素や栄養分を細胞に届けています。
内皮細胞にはTie2(タイツー)と呼ばれる物質があり、これが内皮細胞や壁細胞を引っ付けています。
しかし、何らかの原因でTie2(タイツー)の活性が悪くなると壁細胞が剥がれやすくなり、剥がれた壁細胞と内皮細胞とのすきまから血液がもれて、血液の流れが途絶えて毛細血管が消えてしまいます。これがゴースト血管です。
ゴースト血管の原因としては、まず加齢があります。60歳以上では30%も毛細血管が減少しているそうです。その他に、運動不足や睡眠不足、食生活の乱れ、ストレス、過度の紫外線など生活習慣が大きく影響するそうです。また、冬の寒さによる冷えも原因になるそうです。
ゴースト血管は様々な病気や症状に影響します
毛細血管は皮膚や筋肉、臓器、骨など全身のすべての組織に酸素や栄養分を供給していますので、ゴースト血管による血流不足は全身のさまざまな部位の弊害を起こす可能性があります。
毛細血管のダメージは1部分で起こることは少なく、いろいろな場所で起こっている可能性が高いそうです。
ゴースト血管が関係する病気・症状
・薄毛
・肌のトラブル:しわ、くすみ、シミ、たるみ、乾燥、むくみ
・認知症:脳の毛細血管の血流不足による脳血管性の認知症やアミロイドβタンパクの蓄積によるアルツハイマー病
・骨粗鬆症
・高血圧
・胃腸の不調
・免疫力の低下:がんや感染症のリスク
・冷え症
・筋肉痛が治りにくい:原因の乳酸が溜まりやすい
ゴースト血管の改善方法
一度、ダメージを受けゴースト化した毛細血管も血流を良くすることで途絶えていた血管を再生することが可能だそうです。
睡眠や食事、運動など生活習慣の改善と自律神経のバランスをととのえることが重要です。
睡眠
自律神経には交感神経と副交感神経があります。活動する昼間は交感神経が優位になり、体を休める夜間は副交感神経が優位になります。
副交感神経が優位になると筋肉がゆるんだり、胃腸が活発になります。また、毛細血管が拡張し血流が良くなり、リラックスした状態になります。
血管の再生は睡眠中に活発になるため、副交感神経が優位な状態をキープして、ぐっすり眠ることが大切です。
・部屋を暗くして眠る
・睡眠時間は6時間以上
・寝る前はパソコン、スマホなどをみない(交感神経が緊張するため)
・日中は体を動かす(睡眠ホルモンのメラトニンは日中に体を動かすことでよく分泌される)
運動
毛細血管の血流をうながすためには、筋トレやウォーキング、ストレッチなどの運動が最適です。
特にふくらはぎの血流をよくすることがいいそうです。ふくらはぎは、毛細血管が密集している部位で、ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、筋肉が収縮と弛緩することでそのポンプ作用により、毛細血管に血が流れやすくなります。
下肢の血液循環がよくなれば、全身の血流もよくなるようです。
①かかとの上げ下げ運動
直立したままでもいいですし、イスなどに手をついて支えにした状態で、かかとの上げ下げを繰り返します。
回数:20〜30回/1セットを日に2〜3回くらい
②太ももの筋肉(ハムストリング)のストレッチ
片脚を前に出して上体をさげてもう片方の脚を伸ばしてストレッチします。
その他に足踏みを繰り返す「その場足踏み」運動もいいそうです。
入浴
体を温めることで毛細血管をゆるめます。
副交感神経が優位になり、リラックス効果もあり、血管が拡張して血流がよくなります。
40℃くらいで10〜15分程度ゆっくりと湯につかります。
炭酸入浴剤を使うと炭酸の刺激でより効果的だそうです。
シャワーだけはNGです。
毛細血管を増やす食材
ピペリンという成分が含まれTie2を活性化する食材があります。
①ルイボスティー
抗酸化作用など体によい効果があります。
②シナモン
桂皮という名称で漢方薬の生薬としても使われます。パウダー状、スティック状のものがあります。
③ヒハツ(ヒバーチ)
沖縄でよく使われているコショウの一種の香辛料。ヒハツ茶などもあるそうです。
血流をアップするツボを紹介します
足のツボ
三陰交(さんいんこう)
場所:足の内側のくるぶしから指4本分上で、スネの骨の内側のくぼみ
胃腸を整えるだけでなく、「女三里」とも呼ばれ、女性の症状(月経痛,月経不順,月経前症候群,更年期障害,不妊など)に効果があります。
太渓(たいけい)
場所:うちくるぶしの後ろのくぼみ
後脛骨動脈という動脈の上にあります。
太衝(たいしょう)
場所:足のこうで、第1指と第2指の骨が交わるところにあるくぼみ
足背動脈という動脈の上にあります。ストレスを緩和します。「気」の流れを良くするツボです。
湧泉(ゆうせん)
場所:足の裏で足の指を曲げた時に最もくぼむ所
下腿のツボ
足三里(あしさんり)
場所:ヒザの皿(膝蓋骨)の下のくぼみから指4本分下にさがったスネの骨の外側
胃腸をはじめ身体全体の調子を整えます。健康増進のツボ。松尾芭蕉の『奥の細道』に「足の三里に灸をすえて旅にそなえた」ことも記載されています。最も有名なツボ。
委中(いちゅう)
場所:膝関節の裏の中央
膝窩動脈の上にあるツボ。腰痛の治療にも用います。
承筋(しょうきん)
場所:ふくらはぎの一番盛り上がっているところ
腓腹筋の上にあるツボ
承山(しょうざん)
場所:アキレス腱をふくらはぎの方へなで上げていくと、指がとまるへこみの部分
腓腹筋とアキレス腱の間にあるツボ
お腹のツボ
中脘(ちゅうかん)
場所:みぞおちとへそとの中央
胃腸の調子を整えます。
関元(かんげん)
場所:へそから指4本分下
胃腸の症状、冷え症、生理痛など女性特有の症状にも効果があります。
古くから「臍下丹田」と呼ばれ、気が集まる場所として、重要なツボとされてきました。
ツボ刺激による血流アップの効果
画像は右足に血流障害がある患者様の足のサーモグラフィー像です。
左足に比べて右足の温度が低い、つまり血流が悪くなっているのがわかります。
足三里、三陰交、太渓、太衝のツボへの鍼刺激で温度の上昇が見られます。
つまりツボへの刺激で足の末梢の血流がよくなっていることが確認できます。
※この患者さまの血流障害は、RSD(反射性交感神経萎縮症)という病態によるもので一般的な冷え症によるものではありません。
まとめ
体のいろいろな場所にも影響がでてくるゴースト血管。
健康と若さをたもつためにもゴースト血管の改善が大切です。
ライフスタイルの改善、食事、睡眠、入浴、運動に心がけてゴースト血管を予防しましょう。ツボ刺激も行って下さい。
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