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慢性の痛みが鍼治療で軽減 −鍼の鎮痛効果と鍼麻酔−

長引く痛みや何度も繰り返す痛み、鎮痛薬でも軽減しない痛みなどでお悩みではありませんか。

慢性の痛みは、身体の苦痛だけでなくメンタル面も低下して日常生活やQOL(生活の質)に影響を及ぼします。

何か良い方法がないかとお探しで、鍼灸治療を受けられたことがなければ、一度、鍼灸治療を試されてみてはいかがでしょうか。

ヒトのカラダにはもともと内因性鎮痛機構(システム)と呼ばれる痛みをコントロール(制御)する機能が備わっています。

線維筋痛症や関節症、頭痛など慢性の痛みをかかえる患者さんは、この内因性鎮痛機構が減弱しているとの研究報告があります。

鍼灸治療にはさまざまな効果が期待できますが、『痛みを和らげる』鎮痛効果は、鍼灸治療が最も得意とする効果の一つです。

鍼灸治療は、この内因性鎮痛機構を活性化して、痛みを緩和します。

鍼灸治療の鎮痛効果について『鍼麻酔』の話題もまじえて紹介します。

 

 

 

 

目次

驚きの鎮痛効果 −鍼で手術の痛みを抑える鍼麻酔−

通常、手術をする際には、手術をする患部周辺だけの痛みをとる局所麻酔あるいは麻酔薬によって意識をなくし人口呼吸を行いながら手術をする全身麻酔があります。
鍼麻酔は、手術時の痛みを鍼の鎮痛効果によって取り除く方法です。
今から約50年前の1960年代に、中国では様々な手術に対する何万例もの鍼麻酔の成功例が報告されました。
鍼麻酔によって開頭手術や開胸手術、開腹手術を受けている患者が、手術中に会話をしている映像(全身麻酔を受けていない)が公開されています。
鍼だけで手術の痛みが抑えられていることには驚きですが、鍼だけで行われているのではないとの見解もあり、定かではありません。
また、1971年に、アメリカのニクソン大統領の訪中に随行したニューヨークタイムズのコラムニストであるジェームズ・レストンが、虫垂炎を発症し手術を受けました。
その際に、術後の痛みに対して鍼治療を受け、同紙の1面に自らの鍼治療体験および鍼麻酔に関する記事を掲載したことで、中国における鍼治療、鍼麻酔が世界中に知られることになりました。

本当に鍼だけで手術の痛みを抑えることができた −実際の鍼麻酔の効果−

中国での鍼麻酔の効果については、実際にみたものではないので正直なところ何とも言えません。
しかし、私が実際に経験した鍼麻酔について紹介します。

私が大学の附属病院の外科に所属していた時に『鍼の鎮痛効果』についての研究が行われていました。
基礎研究から始まり、臨床応用としてまずは、腹部手術後の痛みを鍼で抑えられるかどうかについて検証しました。
次に鍼で手術の痛みが抑えられるかどうか、つまり『鍼麻酔』の効果について検証しました。
患者様に十分な説明を行い、同意を得て行いました。

私達は、外来で局所麻酔で行われる皮下腫瘤(脂肪種、アテロームなど)の摘出手術、いわゆる小手術に鍼麻酔を行いました。

腫瘤の周囲を手術の妨げにならないように囲むように鍼を皮膚面に水平に刺入し、同時に手の合谷と下肢の足三里というツボに鍼を刺入して電気を流しました(鍼通電)。
数十分の鍼通電後に、痛みに対する皮膚の感覚がにぶっていることを確認して、皮膚切開が行われました。
手術中に患者様に痛みの程度を確認し、痛みが我慢できる程度であれば終了するまで局所麻酔なしで手術が行われました。
痛みが我慢できない程度であれば、局所麻酔剤が投与されました。
11名の患者様に鍼麻酔手術を行った結果、約半数の5名で局所麻酔剤の投与なし、つまり鍼のみで手術を行う事が出来ました。
しかし、他の6名の患者様は痛みを訴え、局所麻酔剤が投与されました。
ただし、通常の場合よりも麻酔剤の量が少なくすみました。
この様に鍼麻酔の効果には個人差がみられ、すべての人に同様に効果があるものではありませんが、鍼刺激の効果が見られる人には手術の痛みを抑えるほどの効果があると言えます。

私が実際に担当した症例では、切開創が1cm程度でも痛みを訴える人がいる一方で、直径が15cm程度の大きい腫瘤を摘出した人でほとんど痛みを訴えなかった人もいました。

また、歯科で鍼灸臨床を行っている際に鍼麻酔による抜歯を経験することが出来ました。
患者様は麻酔剤にアレルギーがあり、なるべく麻酔剤を使用せずに抜歯をすることになり鍼麻酔を行いました。
この時も局所麻酔をすることなく抜歯をすることが出来ました。
この様に鍼治療は効果がみられる場合には、鎮痛剤に匹敵あるいはそれ以上の鎮痛効果が期待できると言えます。

鍼の鎮痛メカニズム

ヒトの内因性鎮痛機構には、痛みや炎症が起こっている場所(末梢)で痛みを抑えるものや痛みの信号が脳まで伝わる途中の脊髄で痛みを抑えるもの、脳(中枢)で痛みを抑えるものがあります。

鍼治療の鎮痛効果に関するメカニズムについては、これまでに多くの研究が行われ、その結果が報告されています。
なぜ手や足のツボに鍼(通電)刺激を持続的に行うと『鍼麻酔』効果が現れるのかについては、脳の中でオピオイドと呼ばれる物質が分泌されるからと言われています。
オピオイドは、「内因性鎮痛物質」とも言われ、モルヒネに類似した作用を示す物質のことで、エンドルフィンやエンケファリン、ダイノルフィンなどがあります。

鍼刺激の信号が脳に伝わり、脳の視床下部や中脳、延髄からオピオイドが放出されて脊髄からの痛みの信号を抑えることで鎮痛効果が発現します。

まとめ

鍼灸治療は、本来ヒトが持っている痛みを抑えるしくみ『内因性鎮痛機構』を活性化して痛みを緩和します。
痛みのある場所に鍼をして、ダイレクトに痛みを止めたり、手や足のツボに鍼をして脳の鎮痛システムに働きかけて痛みを緩和します。

正直なところ、鍼灸治療の効果には個人差がありますが、時には『鍼麻酔』のように手術ができるくらいに痛みを抑える鎮痛効果を発揮したり、薬が効きにくい痛みにも効果がみられることがあります。

鍼灸治療は副作用がありませんし、痛みを緩和すると同時に、その他の身体の機能を整える効果があります。
慢性の痛みでお悩みの方で、鍼灸治療を受けたことがない方には、ぜひ一度試してみて頂きたいと考えます。

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