下剤はなるべく使わず、自然な排便を取り戻しましょう。鍼灸施術でサポート
便秘薬(下剤)を止めると便がでない、便秘薬の量が増えて心配、便秘薬を減らしたい・やめたいなどのお悩みはありませんか。
便秘薬(刺激性の下剤)を常用していると、徐々に薬の効きめが悪くなり量が増えていきます。さらに腸の蠕動運動がにぶり、自然な排便が困難になります。
最近では、ダイエット目的で下剤を飲み始めて止められなくなり、下剤に依存してしまう人も少なくないそうです。
下剤はドラッグストアでも購入できるので、自己判断で常用してしまうケースが多くあります。
必要な場合は、医師の診察・処方を受けて使用するのが安心です。
便秘の改善を目的に鍼灸施術を受けられる方のなかにも、下剤の常用に悩んでおられる方が多くおられます。
私が鍼灸施術をさせていただいた患者様で症状がひどい方の場合、1日に何度も便意と腹痛を催し、トイレにいってもなかなかスッキリと便がでないためトイレにいる時間がながくなる、食欲・食事量の低下、何度も便意を催すために仕事ができないなど著しくQOL(生活の質)が低下することがあります。
下剤のせいだとわかっていても排便がないことの不安から、また下剤を飲んでしまう依存の状態に陥ってしまいます。
症状が重い場合は、つらいばかりでなく改善するまでに時間もかかります。
また、腸内環境が悪くなるために腸内フローラの多様性が失われて、カラダに悪影響を及ぼす可能性もあります。
鍼灸施術は、自律神経に作用して胃腸の働きを整える効果が期待できます。
依存性や副作用もありません。
鍼灸施術は、下剤を減らす・止めるためのサポート効果が期待できます。
当院では、鍼灸施術に加えて、腸活に役立つアドバイスも行いながら、より効率よくお腹の調子を整えていきます。
なるべく早めに対処して、下剤にたよらない、カラダが本来もっている自然な排便を取り戻しましょう。
目次
- ○ 下剤のいろいろ
- ○ 刺激性下剤を常用すると
- ○ 下剤を常用した排便の状態
- ○ 鍼灸治療を受けながら下剤を減量
- ○ まとめ
下剤のいろいろ
下剤には大きくわけて増量性下剤と刺激性下剤があります。
●増量性下剤
便の量を増して腸の蠕動運動を促すもので、腸管内の浸透圧を上げるもの(塩類下剤)や腸管内で膨張して内容物を増加させるもの(膨張性下剤)などがあります。
作用はそれほど強くないですが、習慣性が少ないのが特徴。
代表的なものには塩類下剤の酸化マグネシウムがあります。
市販薬では、酸化マグネシウムE便秘薬、スラーリア便秘薬、スルーラック デルジェンヌなどがあります。
●刺激性下剤
腸管粘膜を刺激して腸の蠕動運動を促すもので、センナや大黄、アロエ、ピサコジルなどを成分とするものがあります。
作用は強力で強い腹痛とともに下痢となることが多いです。
作用は強いですが依存性・習慣性があり、長期の服用で腸粘膜に炎症を起こすことがあります。
連用すると効果がなくなるために、徐々に服用量が増えるので安易な連用は避け、頓用で使用したほうがいいとされています。
市販薬では、コーラック、スルーラック、ウィズワン、ウエストンなどがあります。
この他にも最近では、ルビプロストン(アミティーザ)、エロビキシバット(グーフィス)、リナクロチド(リンゼス)、マクロゴール4000(モビコール)、ラクツロース(ラグノス)などの作用機序のことなる新薬が開発されています。
自己判断で市販薬を飲み続けるよりも、薬剤師に相談したり、医師に診察・処方してもらうほうが安心です。
刺激性下剤を常用すると
センナ、大黄などのアントラキノン系の刺激性下剤を連用すると、徐々に効き目が悪くなるために、下剤の服用量を多くすると、大腸が痙攣して十分に排便することができなくなってきます。
そこでさらに下剤の服用量を増やすと、下痢をおこします。
下痢が続くと、腸の中は空っぽでも頻繁に便意を感じるようになり、トイレにいっても十分に便がでなくなります。
また、カラダのカリウムが失われるため、筋力や腸の運動が低下して再び排便が困難になるといった悪循環に陥ることになります。
このような下剤の乱用による便通異常は日常生活にも支障をきたし、下剤なしでは便がでない不安から下剤からの離脱が難しくなります。
また、大腸壁に色素が沈着して大腸の運動が低下し、便秘が悪化したり下剤への反応性が低下する大腸メラノーシスと呼ばれる病態になります。
大腸メラノーシスは可逆性(元の状態にもどること)で、下剤を中止すれば回復しますが、回復するまでには時間がかかると言われています。
下剤を常用した排便の状態
鍼灸治療をする際に毎日の排便の記録をつけてもらいます。
この図は、排便の状態をわかりやすくグラフ化したものです。
21歳の女性で、ほぼ毎日、下剤を服用しています。
下剤の服用により排便はほほ毎日ありますが、便の状態は常に軟便・水様便です。
排便はほぼ毎日ありますが、便は少量で常に残便感と腹痛があります。
つまり、すっきりと便が出ていないことがわかります。
下剤の不適切な使用(連用)が考えられます。
鍼灸治療を受けながら下剤を減量
下剤を常用して服用量が増加し、さらに増えることが心配になり、鍼灸治療を希望して来院された方のケースを紹介します。
38歳の女性で、5年前より入院がきっかけで便秘となり、市販薬の下剤であるウエスト錠を毎晩服用していました。
下剤の量は徐々に増加し、5年間に2錠から10錠になりました。
毎晩10錠服用し、翌朝に排便(1回/日)、便はやや軟便であるが残便感はありませんでした。
症状としてはそれほどひどくはありませんでしたが、「下剤を1錠でも減らすと便がでない」という不安から下剤がやめられない状態でした。
下剤を連用されている方は、
毎日、排便がないといけない(気持ち悪い)
現在、飲んでいる量を飲まないとでない(少しでも減らすとでない)
と思われている方が多いようです。
これが固定観念のようになって不安になってしまい、毎日、下剤を飲んでしまうようです。
そこで、「お通じには個人差があって、毎日、排便がなくても不快感などの苦痛がなければ大丈夫です」、「鍼灸治療を行いながら様子をみて、1錠ずつ減らしていきましょう」と説明し、鍼灸治療で腸を整え、排便の状態をチェックしながら下剤を1錠ずつ減らしていくこととしました。
鍼灸治療は、手の合谷、下腿の足三里、腰の大腸兪、お腹の天枢というツボに鍼を行いました。
治療回数は約9ヶ月間に週1回で計20回行いました。
8錠までは、下剤を減らしても、ほぼ1日1回の排便がありました。
しかし、7錠に減らすと、排便がない日がみられたため、安心してもらうために、「でなかった日は8錠にして下さい」とアドバイスしました。
排便間隔が2、3日に1回と開くようになりましたが、特に不快感もないため鍼治療を継続し、半分の5錠まで減量することが出来ました。
5錠まで減量できた時点で、他の理由で治療終了となりましたが、治療を継続していればさらに減量できたと考えています。
まとめ
下剤(特に刺激性の下剤)を常用すると、下剤なしでは排便ができなくなったり、日に何度も腹痛と便意を催すようになり、ひどい場合には日常生活にも支障をきたすようになります。
また、下剤への依存が高まり、下剤を手放せなくなります。
安易に自己判断で下剤を使用するのではなく、必要な場合は、医師の診察・処方を受けて下剤を適切に使うことが重要です。
鍼灸施術は、自律神経に作用して胃腸の働きを整える効果が期待できます。
鍼灸施術は、下剤を減らす・止めるためのサポート効果が期待できます。
なるべく早めに対処して、下剤にたよらない自然な排便を取り戻しましょう。